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ご 挨 拶

 第44回日本眼科手術学会学術総会の総会長を務めさせていただく長崎大学の北岡です。
 私が眼科医としてのスタートをきった約40年前の時点では硝子体手術は重症症例に対して行う最後の手術で、失明宣告に近いものでした。その後20ゲージ硝子体手術が完成し、小切開化が進み、現在では25ゲージ〜27ゲージ手術が主流でほとんどの硝子体手術は短時間で行われる視機能向上の手術になっています。眼瞼、眼窩、斜視、角膜、緑内障、白内障、等々すべての領域で以前とは比べ物にならないほど長足の進歩を遂げています。
 緑内障学会、網膜硝子体学会などサブスペシャルティーの学会に参加すればその分野は診断から手術治療まで網羅して学ぶことができますが、分野横断的なことはなかなか学べません。眼科手術学会は日頃専門分野に偏りがちな眼科医にとって視野を拡げることの出来る分野横断的な素晴らしい場です。
 今回の学会のテーマは「温故開新」です。「故(ふる)きを温(たず)ねて新しきを開く」つまり「新しい術式・分野を進めていくには、過去の術式を研究し、新しい術式を開拓する」ということを意図しました。ポスターには二人の外国人医師を載せています。向かって右はポンペ・ファン・メールデルフォールトというオランダ人軍医で、長崎大学医学部の前身である長崎医学伝習所の初代教授です。ポンペは1857年に日本で初めて西洋医学の講義を行い、内科、外科に続いて、4年目に眼科の講義をしています。眼科は日本における西洋医学発祥の最初からある数少ない臨床科であることに眼科医は誇りを持って良いと思います。もう一人はアントニウム・ボードインで、ポンペのあとに来日した医師で、眼科を得意とし、検眼鏡と眼科手術器具を日本にもたらしました。上野公園の整備にも貢献し彼を顕彰する銅像をみることができます。
 今回の会場は国立京都国際会館です。京都は昔から自由闊達の精神に溢れ、学閥・因習にとらわれることのないところです。京都から新しい風が吹くように、たくさんの方々のご発表・ご参加をお待ちしています。

第44回日本眼科手術学会学術総会 総会長 北岡隆
長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 眼科・視覚科学分野